W1S ヘッドオーバーホール

業者様からW1のヘッドオーバーホール依頼です。
通常のオーバーホールなら大したことはありませんが、今回はクラック修理が主な作業なためどうなることやら。

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ガイドの付け根、リテーナーの座る部分にクラックがあり、そこからポートまで繋がっているとの事でしたので、現状を把握するためレッドチェック。

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うーん。なるほど、本当だ。
ガイドの上部分に赤くなっている所がありますが、ここがガイド付け根のクラック部分と繋がっています。
ここまで酷くなっている場合、かなり高い確率で修復は不可能です。
クラックの修理は他の内燃機屋さんでも断られるケースがほとんどですから。それくらいクラックは甘くないです。

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まずはバルブガイドを抜いてガイド穴の確認。矢印の部分からガイド穴に向かってクラックが伸びそのままガイド穴半分まで走っています。(汗)
で、ガイドを抜いてわかったのですが、吸気側はポートとの壁が薄いためどうやらここが脆いようです。バルブガイドの絞め代も多くとってあり、それもクラックが入る原因の一つです。
現状は非常に厳しい感じで、正直ちゃんと修復できるかもわかりません。

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悩んでいても仕方ありませんので慎重に作業を進めていきます。
ポートまで繋がってしまったクラックはそのまま肉盛り溶接しても意味がないので、クラック周辺部分をポートまで一旦削りとるためエンドミルでズコンとポートまで貫通させます。
ちなみにくれぐれもマネしないようにして下さい。荒療治ですから。

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貫通した穴に合わせて丸棒を圧入します。ポート側に突き出た部分は最終的に削りとってしまうため今は無視です。
このあと圧入によって新たにできたクラックが見つかったため、さらに大きく穴を開けて丸棒を圧入。
穴の形状も芯円にしたり、テーパーにしたり、はたまたネジきったりと、クラックとヘッドの状態に合わせて色々とやり方はあります。
W1の場合ポート側からの溶接ができないため、上面できっちりと止めなければいけません。

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続いてアルゴンで盛っていきます。画像は二回目。
バルブガイドを入れていない状態では完全に止まっていますが、ガイドを入れた時にクラックが走るパターンもあるので気は抜けません。その前にガイドが座る部分を面出ししますが角度出しがシビアです。
この部分が少しでも倒れたりするとバルブがシートリングに収まらなくなります。またバルブのセット長も狂ってきたりと非常に厄介な部分です。

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復活。
あくまで加工は最小で止めておきます。
しかしやっぱ巣ができてしまいますね。混ぜモノいっぱいのアルミ溶接は難しいです。

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ガイド穴も芯円が崩れてしまっているためこのままボーリングでクラックと芯円修正をしていきます。
ブログだとスムーズに進んでいますが、実際はかなり苦労してやっております。

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